003:荒野----ただ荒野を走り続けるように、果てない地平線を目指すように。君の目は、ここを見ていないんだ。
手を。
手を離して、と君は言った。
手を離して。私を行かせて。あの空の下に。あの大地の上に。
あの広い荒野に私を開放して。
隣で僕と繋いだ手は、君を戒める鎖の役。
僕は君を止めておく錘の役。
手は。
手は離さない、と僕はいった。
手は離さない。君を行かせない。
あの荒野に君を行かせない。
それに、君は、ただ首を振った。
でも、なぜだろう。
君の心はここにはない。
君の目は僕を見ない。
君の口は行きたいという。
でも。
繋いだ手が。
振り払われないのは。握りかえされるのは。
なぜだろう。
一枚のパネル。大きな大きな地平線を写した写真。
そこには行けないと、本当は君は ?
僕はただ、君の傍らで手を握って。
---------------------------------------------------------------------------------------------------
君がここに帰ってくるまで、僕はここにいるから。