014:ビデオショップ----人が不思議と行きかう場所。変な交流も、生まれるわけで。


「いらっしゃいませー」
わたしはレンタルビデオ屋でバイトしている。かったるいけど、楽ではある。
店内に人はまばらだ。きゃあきゃあ小声で騒ぎながらホラー系のビデオを選ぶカップル。一人で真剣に恋愛物を選んでるOL。店に入ってきた途端、そそくさとAVコーナーに入るおじさん。
「何泊のご利用ですか」
それぞれがそれぞれカウンターにやってくる。カップルが選んだのは「エルム街の悪夢」。…ベタだけどいいんじゃない?
恋愛物を選んでたOLは「タイタニック」。………好みによるんじゃない?(わたしは好きじゃない)
おじさんはAVを三本もって来た。女子高生とか、まぁ、そんな感じの…。



ここの人間模様は不思議だ。思いもがけない人が変わったものを借りていく。
ちゃらちゃらした子が真剣な人間ドラマを借りて行ったり、(まぁそれは偏見だけど)
普通の主婦が、夫を殺して云々と言うサスペンスを借りて行ったり。(ストレスたまってるのかなぁ)
すっごいまじめそうなサラリーマンが、ものすごいえげつないホラーを借りて行ったり。(か、変わったお好みで)


ビデオは人の心を簡単に移す。
望んでたり、内面に持っているものを人はどうしても選び取ってしまうのだ。


長く勤めていれば常連の客も、その傾向も覚える。
その中でも、何があったのか知らないけど、たまーに違う傾向を借りてく人がいる。
前には恋愛ものばっかり借りてた人が、急にサスペンスものを借りていった。…ありゃ振られたか、けんかしたかのどちらかだな。
AVばっかだったおじさんが急にドキュメントを借りてったり。…地上の星になりたくなったのか、なぁ。


不思議と、そのときその人がどんな心理状況なのか、分かったりもするわけだ。


こっちが客の顔を覚えるわけだから、もちろん向こうでも覚える人がいるわけだ。
親しげに話しかけてくるおじさんとか。(AV借りるんならもっと恥らい持ってよ)
少し会釈をしてくれるおとなしそうな子とか。(うん、いいこね)



絶対顔を上げない男の子とか。(いっつも何も言わずに帰るのよね)



別に借りる内容はおかしくない。アクションものだったり、ミステリー系だったり。


…と言うか、妙にばらばらだなぁ。



「何泊のご利用ですか」
「…二泊」


いつも二泊の彼は、そうしてそそくさと帰る。


人と会うのが苦手とか、そういう人なのかと思っていた。


「二泊三日のご利用ですね。ありがとうございます」
「…あの、」
「…はい?」
「俺―…」


ビデオショップは人が行き交う。変わった出会いもあるわけなんです。

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俺、君が好きになったんだけど、どうしたらいいと思う?


2004/02/18


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