最後の刃‐bee on the horns of a dilenmma




してはいけない、ときつくいわれた。




使ったら最後、終わりだ、と。




ではいつ使うのだろう。この刃を。




そのために生まれてきたのではないのだろうか。






そう思っていたんだ。





すると、彼女はこういったんだ。


「――そういうのならば仕方がありません。なら、使うときは、決して―――」




決して躊躇ってはならない。







そう言われた。その刃を、今、持っている。







慌しく仲間が走っていく。伝令が同じ事を幾度も叫ぶ。



「侵入者アリ!各自、持ち場を離れるな!!発見次第、






 命 に 代 え て も 、 殺 せ ! ! ! 」






城の中は一瞬にして騒がしくなった。護衛隊は城の奥に向かって消えていく。女王とその子供たちを守るためだ。
自分たち一般兵は城の入り口に配備されている。






そしてそこで、たった一度の武器を使い死んでいくのだ。







どうして。




どうして、死ぬ?




なぜ、誰のために?何のために?





この命を投げ出してしまえるほどの大切なものだっただろうか?





守るべきものは。





今更ながらに尻込みしている自分に笑えた。持った刃は震えていた。
奮い立たせて鞘を捨てた。もう、こんなものは必要ないから。








走り出した。足音が反響して唸り声のような音になる。
怒号が近づく。戦闘が近い。
塊のような戦いの場に、今、飛び込んだ。




躊躇うな!刃を奮ってそう叫ぶ。
躊躇うな!千切れた残骸に心は留めない。
躊躇うな!待つところは所詮一緒。
躊躇うな!きっとそれは許されない。






足元に転がる仲間だった「モノ」を踏み越えて、目前に迫る敵にめがけて






                    躊躇うな!!!







訳の分からない叫びが口から漏れた。息が尽きるほど、叫んだ。






躊躇わない。これは、もう、








本能だ。







その喉下めがけて刃を深く深く突き刺した。敵が痛みに身をよじった瞬間に、刃は手を離れる。





ハラワタ
 腸を一緒に持っていって。








次の瞬間に振ってきた敵の刃が胸を貫いた。そんなことはもうどうでも良かった。
躊躇わなかった。それで十分。
自分の上をまた誰かが最後の刃を掲げて逝く。



そうして積み重なるのは幾人もの俺だ。





たった一度きりの殺人。たった一度きりの刃。たった一度きりの命。





たった一度きりの人生。


本当に守るべきか分からないものを守るためだけに生きた。でもどうかそれを無駄だといわないでくれ。

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逃げることは許されない。それを悲しいと言ってしまえば存在意義なんてなくなってしまうに違いない。


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