陽炎がのぼる。
石と砂利と、そんなもので囲まれたここは、昨日雨が降ったせいもあって、むしむしとしている。
あちぃーよ、墓場。
鬼灯
昨日の夜に迎え火をたいた。あっちからこっちへの目印。間違えて他人の家に行かないようにと思いながら。
今年は初盆だった。故人の生前の人柄か、驚くほどほど客が多くて、正直辟易している。
…本当はすごくありがたいことだって分かってはいるんだけどさ。
遺影でにこやかに笑った顔を見る。最近の遺影はすごい。喪服じゃなくて私服があるし背景も自由に合成できるんだから。
おかげで写真は桜を背景にデニムのシャツを着ている。白黒の写真の中で、そればかりが鮮やかだった。
今日、墓場に向かった。お盆の時期だからか、どの家の墓にも花と、鬼灯が挿してある。
鬼灯のオレンジは、墓場で物悲しく明るかった。
週に一度は来ているといううちの墓は雑草もなく綺麗だった。誰か来てくれたのか、生き生きとした花があった。
水をかけて、綺麗に流して、古い線香を捨て、新しい線香を供える。
さっき買ったばかりの、冷えて水滴がついたビールを墓前に置いた。大好きだったアサヒの奴。
しばらく黙って、見ていた。
彼の人はもういないのに、まだこんなにも身近に感じる。骨はここに埋まっているというのに。
暑さか何か、目眩がして振り返る。
照り返しで光る、墓標がずっと立ち並んでいた。
鬼灯のオレンジが眩しい。
それからそこを後にした。
明後日、最後の日を迎える。送り火をたいて、こっちからあっちへ旅路を作る。
来年また会いに来るから。
だから、来てね。
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まだ泣いてしまうんだけど、そこは笑って許して。
2006/08/14