た  と  え  ば  静  か  に  キ  ス  を  し  て





「梅雨ですねぇ…」

一週間も降り続いている雨を窓から眺めながらポツリと私は言った。

「まだ五月になったばっかだろ」

背後で彼がそう言って、沈黙。



雨の音。



「…何か飲む?」

「いらなーい」

彼が聞いて来たのをそっけなく断って空を眺める。



灰色。暗い空。



明かりもついてない部屋。薄暗い。

振り返ると、彼は座ってこっちを見ていた。


「…お前の顔陰になってすげー怖い」

思わずムッとすると、雰囲気で感じ取ったのか彼が笑う。


「…おいで」


手を差し延べられたらもう文句も言えなかった。

抱き留められて安心する。



雨の日。静寂。



少し甘える。自堕落に。


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キスをするならゆっくりと。


2006/05/13




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