souldiers<S>


あんたがいなくなってからずいぶんたった。

ひとりきりで生きてくことにようやく慣れて、身を守る術も覚えた。

この場所は一人で暮らすには広すぎるということを実感した。

月夜に遠いキャラバンを眺めながら、眠れない夜を過ごしたりもした。




そんなときは、確かにこの身を呪いたくなるけど。




でもあんたが残してくれたものだから、決して嘆いたり捨てたりなんかしない。

十分、傷も癒えた。一人で生きていけるようになったし、取り合えず困ることはないだろう。

ここを旅立つ準備はできたんだ。でも、まだ決心がつかない。




あんたと始めてであった場所。あんたが最後に消えた場所。



たった一晩。それだけしか一緒にいなかったから、ここを離れたらあんたとのつながりがなくなってしまう気がするんだ。



一人がつらくて、何度も泣いて、泣いて、それでも投げ出すわけにはいかなくて。



嘆いて、倒れ付して、爪を地面で削っても。助けをくれる手はもうない。後にも先にも、自分を待つのは恐怖と差別だ。





でも、それでも旅立たなければ、前に進めない。

一緒に旅立つと約束した、傍らにもうあんたはいないけど、立って、立ち上がって、前に進まないといけない。



あの時と同じような月のきれいな夜明け、旅立とうと決めたんだ。

必要なものをそろえて、今はもうちょうどよくなった靴を履く。





「……じゃあ、いくよ」



誰もいない部屋にそう告げて、出た。

仲間の墓によって、祈りをささげる。もう、ここにはこれないかもしれないと、心の中で謝った。



それから君がいなくなったときのままの、瓦礫の山に眼を向けた。





君を探すことは、とうとうできなかった。






「……いってきます」




振り切るように背を向けて、東に向かって歩き出した。少しだけまた泣けてきたけど、涙を必死に拭って歩いた。

砂漠の朝はまだ寒い。外套をかぶって歩き続けた。





――日が昇る。






光が差し込んできたのを見て取り、眼前の砂丘をかけ登って、ゴーグルをはずした。

眼に染み入る朝日がまだ濡れていた頬を射す。ついで、また涙がこぼれた。嗚咽を堪えて、膝を落とす。









あぁ。



あの時と同じように空は赤い。






君はもういない。あたしはひとりきりで。この呪われた体を引きずって。


それでも生きていくんだ。あんたと約束したから。





『一緒に行こう、旅立って、この呪いを解きにいこう』





苦難と絶望が待ち受けていても、この先に幸福なんてなくても。



振り向かない。歩き出すんだ。





「…さよなら、    」





たいせつな、あなた。





砂塵が巻き起こる。ゴーグルを再びつけて、足を踏み出した。







いつか、きっとあえるよ。

ねぇ、それまで。

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あなたのことを、わすれない。

07/01/04UP




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